「あなたのライバル派遣します！」
　思っていたよりも少し高めのその声は、それだけの短い挨拶の言葉を告げた。

その最後にはヒマワリの花が咲いたような笑顔を見せる。

そのため、女子たちからは再び黄色い歓声があがる。

「よーし、じゃあ倭はあの窓側の一番後ろの空いている席を使ってくれ」

「はい。わかりました」

　長い足をスタスタと動かして、何のよどみもなく竜馬のほうへと近づいてくる。そう、竜馬の席は、窓側から一列ずれた一番後ろの席。

つまりは、健の隣の席だった。

　健は、席に着くと爽やかな笑顔を見せながら竜馬のほうを振り向いた。

「お隣さんということで、よろしくな」

　あまりにも砕けたその態度に、人見知りの激しい竜馬も自然と顔が綻び頷いていた。

「あぁ、よろしく。何か困ったことがあったら聞いてよ」

　しかも、普段なら「よろしく」ぐらいまでしか言わないところが、「困ったことがあったら聞いてよ」と自分でも驚くようなことを言っていた。

それもこれも、この倭健という男が醸し出す雰囲気のせいだろう。

　窓から見えるイチョウの木の上で羽を休めていたカラスが、眠そうな声を上げて一声啼くと億劫そうに羽を広げて青い空へと羽ばたいていった。
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表紙・目次

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