愛をちょーだい!


クラスメイトからの質問の嵐を何とか切り抜けた放課後、職員室を訪れたあたしは、職員室の奥にある生徒指導室に通された。


生徒指導室に入るなり、パイプ椅子にドカッと腰を下ろした先生は、禁煙場所であるここで煙草に火をつけた。


「お前、あン時のガキか」


そして、煙を吐き出すのと一緒に飛び出してきた言葉に一瞬、ビクッと身体が震えた。


それでも静かに頷いたあたしは、俯いたまま次の言葉を待っていたんだけど、


「あの日のことは忘れろ」

「!──えっ」


彼の真剣味を帯びた言葉で弾かれたように顔を上げれば、真っ直ぐにあたしを見据える彼とバチリと目が合った。


彼の言う¨あの日¨とは、あたしが助けてもらった高校一年の春の事を指しているんだろう。


だけど、あたしには彼のその言葉に首を縦に振るなんて事はできなくて、


「忘れません」

「あ?」


気が付いたらそう口走っていた。
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