愛をちょーだい!
新学期早々遅刻したあたしを待っていたのは、夢にまで見た彼との再会だった。
「今日からおまえらの担任になる、神楽弘巳だ。宜し──」
「すみません!遅刻しま──あーっ!」
遅刻したあたしに視線を向けて、一瞬顔をしかめた彼は、大きく目を見開いた。
「美乃里、知り合いなの?」
「え、えっと…」
あたしの叫び声に回りはざわつき始め、その中であたしに声をかけてきたのは、三年間同じクラスの明智由来(あけちゆら)ちゃんだった。
由来ちゃんには、二年前の初恋の人の話はしてあるんだけど、まさか今、教壇に立っている彼がその人だなんて言えなくて。
痛いほど突き刺さるクラスメイトたちの視線を受けながら、そんなこと口が裂けても言えなかった。
「──久瀬美乃里。後で職員室に来い」
「え、はっはい!」
あたしが言い淀んでいると、彼はあたしの方を一瞥した後、そう言い、重ねて「ホームルーム始めっぞ」と出席簿で教卓を叩いて、その場を一時静めてくれた。