遙か彼方


大学の周りは田畑に囲まれている。

街灯も一つ一つの間が何メートルもあって、道はほぼ真っ暗だ。

道は農道とでも言うのか、案外広い。

そんな道を車が通らないことをいいことに車道を広がって歩いた。

それでも私たちの手はしっかりと握られていた。


まるで最後を惜しむように。

しっかりと…。


彼は楽しそうに周りの風景をキョロキョロと忙しく見ていた。

私には暗くて何も見えなくて、何が楽しいのかわからなかった。



15分程歩くと目的地が見えてくる。

彼に気付かれるよりも先に、私はその目的地を指差した。


「ほら、あそこ」

「え?」


未だキョロキョロしていた彼が、一点を捉える。


「え!?」

「見えた?」


声からして興奮している彼に、私はクスクスと笑った。

そんな余裕な私をよそに、彼は走り出した。


「ちょっとっ」


手を繋いでいるのを忘れているんだろうか。

私は彼に引っ張られるようにして目的地まで連れて行かれた。




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