遙か彼方
「美桜って可愛いね」
…………はぁ?
何をどう思ったらそうなるのか。
人のこと笑っておいて何を言ってるんだこの人は。
私は指の隙間から睨んでやった。
「ん?」
このすっとぼけた声が気に障る。
「何でもない」
私は泣いた目を擦ってから手を戻した。
そういえば、お腹が空いた。
そろそろお昼ご飯の時間だ。
「葵」
「何?」
「私お昼ご飯に一度寮に帰るけど、葵はどうする?」
「美桜はまたここに戻ってくるの?」
「ええ」
すると彼は腕を組んで何かを悩み始めた。
何だろう。
「僕は今日はもう帰るね」
「えっ」
思うよりも言葉に出てしまった。
否定的な言葉が。
「ごめんね」
彼にだって色々事情があるのはわかる。
私みたいな暇人、居る方があまりないし。
分かってはいるけど……。
悲しくなった。