CAPTORS

「えと、春日……だっけ?そんな小難しい理屈で良し悪しなんか決めれるものじゃないよ。そんなことを言っちまうと、それは全部オレにも当てはまるんだからさ」

ベッドの上で二つの拳を強く握りしめ俯く。視界に捕らえた腕から色々なコードが生えていることに内心驚きながらも、言葉を続ける。

「オレがあの化け物が近づいていることにすぐに気が付いていたら、とかもっと上手く力が使えていたら、とか考え出したらどこまでもきりがないんだ。……みんなの命はもう戻ってはこないけどそれを誰かのせいにはしたくない。あんたたちはオレを助けてくれたんだ。だから、オレはお礼が言いたい。」

顔を上げると、春日と目があった。
その目をまっすぐに見つめながら希螺はもう一度頭を下げた。

「助けてくれて、ありがとう」

そう告げた瞬間、春日の顔がみるみるうちに真っ赤に染まりあがった。

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