世の中の
せり


友也たちとは別の理由で、仁もまた犯人を捕まえるために意気込んでいた。

―絶対に捕まえてやる。唯を刺したこと、後悔させてやる

「辛い?」

仁の元に、新一が音もなく歩み寄ってきた

「………」

新一の質問には応えず、代わりに新一を睨みつけた

「何怒ってるの?」

質問はしたが、新一も大方理由は分かっていた

「おめーさー、唯がああなること薄々分かってただろ?」

新一は自嘲気味に笑い
「唯がどんな行動するなんて、僕にわかるわけ―」

「んなわけねーだろ!!」

近くにあったイスを蹴り、イスはもの凄い音をたて、倒れた。
それを無表情のまま見つめる新一。

「おまえの場合、大体は読めるんじゃねーか?」

仁がこうなった場合、いつもなら唯が笑ってなだめていた。
しかし、今はその存在がいない為、仁は暴走し始めていた。

「別に俺は怒ってるわけじゃない。ただあんたが、ああなるとは知らなかったって態度に苛立ってるだけだよ」
つまり怒ってるわけね…と新一は思った後、
「僕は全知全能の神じゃない。全てわかるわけないじゃん」

新一は一呼吸おき、

「仁はただ、自分が唯を護れなかった悔しさをを僕にぶつけてるだけなんじゃない?」

仁の体はビクッと動いた
新一はそれを見た後、小さくため息を吐き

「ま、仁の罪悪感が薄れるのだったら、別に僕は構わないけど…ね」

そう言って部屋を出る。

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