フェンス
開いたドアと壁に挟まれて頭を打ったのだろうか?
2人の警備員が足元に伸びていた。
『はぁー…うまくいった。』
春斗は胸をなで下ろし俺にピースをすると目の前に続くコンクリートの階段を駆け上がり始めた。
俺も慌てて階段を駆け上がる。
階段も壁も天井もすべてコンクリート…
ブラックフェンスといい…ホワイトフェンスといい…なんて温もりの欠けらもない建物なんだ。
長い階段は俺たちの体力をどんどん奪っていく。
階段を登りきり分かれ道にさしかかると春斗は地図を取り出し方向を確認する。
『香音さんどっちに行けばいい?』
『母さん聞こえた?』
『そこを右よ。
右に真っすぐ行って渡り廊下を渡って。
その突き当たりに荷物用のエレベーターがあるわ。
それに乗って!』
『わかった。春斗こっち!』
いよいよ時間もなくなってきた。
いちいち繰り返し伝えているヒマはない。