フェンス
焦る気持ちは逆に思考を遅らせていく。
沈黙が続く―…
春斗がため息をつき壁にもたれた。
ガタンッ!
突然、春斗がもたれた反動で壁から何かが開いてきた。
『なんだこれ?』
『あっ!それアレだよ!』
『アレってなんだよ?』
『あの…名前わかんないけど洗濯物入れたら一番下のクリーニングルームに集まるやつ!
もしかしたらこれで上までいけるかもしれない。
…そういうシーンを映画で見たんだ。』
曖昧な俺に春斗は少し苦笑い。
『でもこれ落ちたら終わりだぞ?』
春斗が下を覗き込む。
『やる…しかないだろ…?
一か八かの賭けだけどこんなとこで立ち止まってるわけにもいかないだろ…?』
真剣な表情の俺を見て春斗はいつもの笑顔を見せた。
『おっけー!俺は登りきる方に賭けるぜ!』
『よし。』
俺は映画で見た通りに両手両足を突っ張り少しづつ上に登りはじめた。
意外と滑らないことにホッしながら上へ上へと進んでいく。
春斗も見よう見まねで俺の後を登りはじめた。