オバケの駐在所
でも言ったって
そんな辺ぴな地方での
小さな催し。

呼ばれて来るのは
お決まりの奴らで、
誰が出たって力の差は
毎回さほど変わらない。

つまり天狗は勝負の優劣に
興味があるのではなく、
自分の山にみんなを呼んで
ワイワイ騒ごうって思惑だ。

そして俺らは今
その稽古をしている。

だけど俺には
もう一つ、優勝とは
違う目的があった。

「ミント、あなたさっきから
そうやって空ばかり
見てるけど何かあるの?」

話しかけてくるのは
他人の事ばっか気にかけてる
おせっかいなキャルロット。
前髪がクルクルしていて
年の項は俺より十個ばかし上。
俺が住んでるみたけ山で、
体が不自由な子供の
面倒を見ている
めっぽう世話焼きな姉さんだ。

「キャルロット、
恥ずかしがり屋のウサギの話
聞いたことあるか?」

「何の事?」

キャルロットはその赤い瞳を
一層クリっとさせて
こっちを見つめている。

山の入り口に覆い繁る
モミジよりも深い色合いで、
俺は小さい頃から、
キャルロットのその綺麗な瞳が
好きだった。
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