オバケの駐在所
人の流れを無視して
歩いていた俺は
前からきた人たちに
何度も肩があたっていた。

夜の冷たい風は
寂しそうに頬を撫でていき、
街のビル明かりは相反して
ギラギラと活気に溢れる
アットホームな空間を
作りだしている。

だがそれは人の歪んだ思考を
おおい隠す程度の
ままごとにすぎないだろう。

本当のぬくもりは
ここにはないのだ。

さっきから呼び込みの男が
何人か声をかけてくるが
視線さえもよこす気はない。
もとより気分は
それどころではないと
いうのもあった。

俺は少し目まいがして
左手で額をおさえる。

心なしか頭が重い……。

やはり俺にはどだい
無理があったのだろうか?

ずっと会いたかった奴が
ここに住んでいた。
それを知ったのは
つい最近の事だ。

「おい、ちょっと」

と、ふいに肩を掴まれた。

振り返るとそこには
警察がいた。
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