オバケの駐在所
小百合の部屋に
マスターのクシがあったのを
刑事に知れたら
めんどくさいなとか、
今から結婚式って
もう夜になるじゃないかとか、
『みゆきに会いに行ける
勇気をくれ』って
排水溝に願ったのは
正解だったなとか。

下手したら
殺してくれともとれるけど、
みゆきがいなきゃ
何も始まらないとも
とれるだろ?

でもまぁ、
オバケにただ勇気を
もらうだけじゃなく、
これくらいの
なんでもこじつけられそうな
アバウトな願いを
とっさに言えるようじゃなきゃ
とても課長なんて務まらんぜ。

目の前の彼女は
小気味よくプルタブを引いて、
飲み口が少し
へこんでしまったスチール缶に
唇をあてた。

人のものをいつも
お構いなしに飲んでいた
みゆきらしいなと、
俺は思った。
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