夕暮れ色の君


優しげな瞳も、綺麗な顔も、すらっとした体型も、大好きな“あの人”と一緒。


“あの人”は背がもう少し高かったり、髪の色が明るい茶色だったりと、多少の違いはあるけれど、

そのことを除けば、長く“あの人”と一緒にいたあたしでも、見間違えてしまうかもしれない。



名字も違うし、名前も聞いたことがないから、“あの人”とは無関係な他人なんだろう。



他人なはずなのに顔が似る、テレビとかで何回か聞いたことはあるけど、実際にあるなんて、思いもしなかった。



『…ねぇ、』


「?」


『そんなに見られると、さすがに僕も恥ずかしいんだけど』



その蒼さんの言葉で、あたしはやっとハッとした。


今までずっと、蒼さんを見つめ続けていたなんて、あまりにも失礼すぎた。


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