夕暮れ色の君


…その代わりに、今日分かったことが、一つある。



『それじゃあ、僕は帰るね』



そう言って、また柔らかな笑みを見せた彼の奥底には、

あたしと同じか、もしくはそれ以上の深い闇が、ある。



何も根拠はないけど、確かにそう、感じたから。



穏やかで、柔らかな笑みをもった蒼さんの裏側には、

脆くて、今にも崩れそうな蒼さんがいたりするんだろうか。





あたしは、そんなことをぼんやりと考えながら、

夕暮れ色に染まった彼が帰った方向をただ、黙って眺めていた。


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