夕暮れ色の君
「…」
あたしは言いたいことはあるけれど、言葉が見つからず、無言になる。
そんなあたしの反応を肯定と受け取ったのか、
『じゃあ、僕はまだいるから』
とだけ言って、木陰にあったあたしの持ってきた小説を指差す。
『見ても、いい?』
「…どうぞ」
別に隠すものでもないから、許可を出す。
あたしが本を手渡すと、蒼さんは小さく『ありがと』と言って、本を開いた。
すると不思議なことに、開いた瞬間、蒼さんはあからさまに驚いた顔をした。
そんなに驚く必要があるだろうか。
「…?、どうかしましたか、」
あたしは、蒼さんのあまりの驚きように、首を傾げる。