夕暮れ色の君
「…理由、なんて。あたしは、ただ、ハッピーエンドの話が好きだから、」
『違うよ』
あたしの一回も噛んでない、完璧な誤魔化しに、蒼さんは言い切って否定する。
『あるでしょ、本当は』
澄みきった綺麗な瞳が、あたしを見つめる。
『…ねぇ、教えて』
…その瞳に、捕らえられそうになるのを、目を逸らすことで、耐えようとした、けれど。
『逸らさないで』
「っ!」
ぐい、っと引っ張られて、目が合う。
『…大丈夫だから』
切ないくらい、優しい蒼さんの表情が、あたしの瞳に映る。
その表情を見た瞬間、あたしの中に何か暖かいものが入ってくるのを感じた。