夕暮れ色の君


「…理由、なんて。あたしは、ただ、ハッピーエンドの話が好きだから、」


『違うよ』



あたしの一回も噛んでない、完璧な誤魔化しに、蒼さんは言い切って否定する。



『あるでしょ、本当は』



澄みきった綺麗な瞳が、あたしを見つめる。



『…ねぇ、教えて』



…その瞳に、捕らえられそうになるのを、目を逸らすことで、耐えようとした、けれど。



『逸らさないで』


「っ!」



ぐい、っと引っ張られて、目が合う。



『…大丈夫だから』



切ないくらい、優しい蒼さんの表情が、あたしの瞳に映る。



その表情を見た瞬間、あたしの中に何か暖かいものが入ってくるのを感じた。


< 37 / 85 >

この作品をシェア

pagetop