夕暮れ色の君


…本当は蒼さんは、最初から分かっていたんだ。



あたしが、蒼さんが原因で顔が赤くなったことを。


そしてそれが、決して熱を出しているからではないことを。



だから、あんなにあたしに近づいて、あたしの反応を見ていたんだ。



あえて、あたしが熱を出していると思い込んだ振りをして。



あたしが天然だと思っていた行動は、蒼さんの演技だった。



「っ、やられた…」



蒼さんの演技力も。

さらっと出された難題にも。



とにかく、完敗だ。



…あたしの反応なんて、きっとお見通しなんだろう。


「…はぁ、」



あたしが、蒼さんには敵わないことをまた痛感させられた時だった。


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