夕暮れ色の君


誤魔化しや、嘘への後ろめたさか。

それとも、蒼に悲しい顔をさせるほどの、苦しい理由があるのか。



かつて、あたしのことを“秘密だらけだ”と言った蒼の言葉を思い出した。



「きっと、蒼の方が多いじゃんか…」


『え、僕の何が多いの?』



『ん?』なんて、首を傾ける蒼を見て、思う。



蒼は、あたしより何倍も、謎だらけだ。


おまけに、蒼にはあたしのことなんてお見通しかもしれないけれど、

あたしには蒼の真意が見えないんだ。



…お互い隠したいことがある、あたしと蒼。



『僕に、似てるから』



以前そう言った、蒼の言葉が今になって分かったような気がした。


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