夕暮れ色の君


「…それって、どうして?」


『…』



別に帽子を被ることが、おかしい訳じゃない。


芸能人は外出時正体がバレないように、深く帽子を被るし、

もしかしたら、蒼はモデルのような活動をしていて、そのためかもしれない。



…ただ、不可解なのは、



『帽子が好きだからねー。僕、帽子コレクターなんだよ』



そう言った、蒼の表情。



蒼ほどの洞察力はないけれど、あたしも観察力は鋭い方だ。



この数日間で、蒼のいろんな面を見た。



その中で、何か誤魔化す時。
嘘を吐く時。



『…それは、どうだろうね、』


『走っても走っても、闇の中から解放されない。

僕には光を見る資格がないんだ』



…必ず、蒼は悲しい顔をするから。


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