本当の恋に 気づいた日

家に帰ると、また悠羅さんが来ていた。


「こんにちは、風雅クン」



「…どうも」


いつも俺はそれしか言わず、自分の部屋に行く。


兄貴の従姉なのだから、法事などで俺も会ったことや話したことはあった。


でも、俺はあまり、この人が好きでは無かった。


世界が違う、というのを見せつけられた気分になるからだ。



…兄貴の母――俺の義母――は資産家の息子と結婚していたが、もともと政略結婚に近かったから、兄貴を産んでからもずっと冷え切った家庭を鬱陶しく思い、離婚して俺の父親と結婚したという過去がある。



まあその、資産家の息子と政略結婚するぐらいだから、義母の実家は超がつくほどの大金持ちで、当然悠羅さんの家も大金持ちだ。



いつでも厳格な雰囲気を漂わせていて、完璧なのだが、感情がない人形みたいだ、と思った。



兄貴の前でも、それは変わらない気がする。



悠羅さんは本当に、兄貴が好きなのだろうか……。



はぁ……。



兄貴、今日、そう言えば部活って言ってたな……。



……っ…アイツ、あの後部活に行ったのだろうか……。



「ねえ、風雅クン」



俺が階段を上って部屋に戻ろうとすると、悠羅さんが話しかけてきた。



「何ですか?」
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