なんでも屋 神…第二幕
「つい二週間程前だったか、一人の男が俺を訪ね…いや、正式には親父を訪ねて事務所にやって来た。」



タバコのフィルターを、奥歯で力強く噛み絞めた兄ぃの言葉を繋げれば、その男はアポイントも無しで、道具一つ持たず[神堂組]事務所に現れたらしい。



羽尾の亡き後、必然的に頭の座に収まった兄ぃは、其れまで仕切っていたクラブや金融業を若頭に任せていた。



今の兄ぃは[神堂組]の経営全てを馳せ、傍らでは金融業からの上がりを株や債券、又は債権に注いでいる。



ふらっと音も無しに現れた、何処の馬の骨とも分からない男を、組の看板とも言える親父に会わせる筈が無く、男も引かない為に兄ぃが接見した。



素直に組の顔で有る親父に会わせる…不況の煽りを受け、武闘派から経済に力を入れ、その影を潜めているとは言え、それだけで[神堂組]の武力、金融力を根底から覆すには十分すぎる行為だ。
< 118 / 344 >

この作品をシェア

pagetop