なんでも屋 神…第二幕
「勿論俺は直ぐに組員をチャイニーズタウンに飛ばしたが、その男が言ったように、昨日まで降り続けていた血の雨は上がっていた。」



最後の煙を窓の外に吐き出し、その時の事を鮮明に思い出したのか、珍しく苛ついたように備え付けの灰皿にタバコを押し付ける兄ぃ。



「確かに異様な雰囲気を纏った男だった。俺の匂いと似てる…不覚だが、俺も初見でそう感じた。あの男と違うのは、そうだな…色を付ければ彼奴は黒い碧だろう。」



そう語った兄ぃの瞳は、殺気も怒気も含みはせず、何処か懐かしむような瞳に変わっていた。



「それで[神堂組]は共存共栄の道を選ぶの?」



最早俺の頭の中に、その男の名前が確信を得たように木霊していた。



兄ぃも俺と同じように、黒に碧を混ぜたようだと感じた男。



裏社会に殉ずるには、その男が、その纏った影が、全て異様に見えるのだ…。
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