なんでも屋 神…第二幕
「成る程、黒沢の言う通りだ。此奴は梃子でも動かんわい。それに己を過大評価もしていない…即ち、傲りや油断が一片も無い。」



横で神堂に頭を下げた兄ぃは、何時もと変わらず無表情。



暫く会わなかった間に、一枚も二枚も己の殻を破っていたのだろう。



「目の前にぶら下げた餌に喰い付かんかったのも良い。好条件に転ぶ者は、後々裏切る確率が高い…だが、それで儂は益々気に入ったんじゃがの。」



目の前の老虎は、玩具を買って貰えなかった子供のような表情を張り付かせているが、その瞳の奥には未だ諦めていないと言う炎が宿っている。



「まぁ良い。儂が居ては話し難い事も有るじゃろ。そろそろ儂は去ぬから、黒沢…神に鱈腹飲み食いさせてやれ。神、何か困った事が有ったら何時でも遊びに来なさい。今夜は久しぶりに楽しかった。」



座から立ち上がると同時に、またも祖父のような瞳を投げ掛けてくる神堂。



この男と俺の間に、どんな繋がりが有るのか…お袋の過去に興味は尽きない。
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