なんでも屋 神…第二幕
化粧を直しても未だ瞼の重そうな一葉を、あと一時間もすれば帰宅の時間となるガッコに送り届け、春の陽射しに抗う(あらがう)マジェスティで事務所へ向かう。



兄ぃを目の前で撃たれ、粗末に言えば頭に血が上っていた。詳しく語れば、血管の中が沸騰してしまいそうな感情の昂揚を、己で抑えきれず歯痒かった…。



だが、それを何処かで喜んでいる自我の狭間に立たされているような錯覚にも陥っていた…。



勿論、兄ぃを撃たれた事を喜んでいる訳では無い…本音を言えば、この状況を楽しんでいるもう一人の自分が居る。



血が騒ぐと言うのか何と言うのか…燃える自分と冷めようとしている自分…家に帰る迄、その狭間で葛藤していた。



心の中で轟々と音を立てて燃えていた業火が、一葉と会った事により、静かに鎮火されている…素直に一葉に感謝。
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