なんでも屋 神…第二幕
「其処からこの間迄、儂は物陰に隠れて二人を見つめておった。そんな二人が肩を落として現れるようになったのは一ヶ月前じゃ…。」



大さんの瞳にはじんわりと目尻に涙が滲み、半年間あの二人をどんな思いで見つめ続けたのかを、深く考えさせられた。



「今更のこのこと顔を出せた筋合いじゃ無いが、日に日に肩を落としていく二人を見ておられなくての…気が付いたら二人の前に立ち尽くしておったよ。」



背後に立つ桑の木の枝と枝の間から、春の優しい木漏れ日が大さんの暗い表情を照らした。



「儂がその事に気付いたのは、古川に声を掛けられてからじゃ…土下座して昔の事を謝る儂を一つも責めようとせず、儂の身を案じ、あれからただただ捜しあぐねていたと言ってくれての…。」



長い昔話に耐えきれなくなった、大さんの右膝に置かれた右手の先に長白くなった灰がポツリと地面に落ちて行った。
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