なんでも屋 神…第二幕
「頼む神君。こんな老い耄れの頭なら幾らでも下げよう…あの二人を幸せにしてやってくれんか。少なくとも、古川にはその権利が有る筈なんじゃ…頼む神君。」



弾かれたようにベンチから跳ね上がり、俺の靴先数センチの所で、赤土の地面に頭を擦り付ける大さん。



「金は無い…無いが、出せる範囲なら儂が出す。だから…頼むよ神君。」



突然顔を身体を上げ、作業服の中からくしゃくしゃに丸められた皺だらけの二千円を、大さんは必死に伸ばしながら俺の手の上に広げた。



首からぶら下げた、角の解れをガムテープで留めた小銭入れを、俺の両手に乗せられた二千円の上で、頼むと言いながら振り続けた…。



「…大さん。」



誰がこんな生きにくい世の中を作り出したのだろう…生まれ落ちた世が悪かったでは済まされない現実が、此処には確かに存在する…。
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