なんでも屋 神…第二幕
席は間に通路を挟んで左右対称、右に四つ左に四つ並んでいて、薄暗い店内には、似つかわしくない早いテンポの音楽が大音量が流れている。



小走りでやって来た歳の変わらなそうなウェイターに、人差し指だけ出して一人だと伝え、奥の席へ案内してもらう。



小分けに区切られたコの字型の席は、天井から白い薄布が八の字に下ろされ、向かいの席を覗くのは困難だった。



一先ず席に着くと、間髪入れずに赤いドレスを着た女が隣に座る。恐らく俺より若いが、何も喋らない。



勿論喋れないのでは無い。正確に言えば、まだ日本語でキュウケイ(休憩)、トマリ(泊まり)ぐらいしか教えられていないのだろう。



覚束無い手付きで水割りを作り始めた所を見て確信を得るが、好都合だ。この子には悪いが仕事をさせて貰おう。
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