ベリークラッシュ
ざわざわと騒がしい、昇降口の前

女の子とちがう低い声
揺れるプリーツスカートじゃなくて、まだ真新しいズボンをはいていて

…む、り


「…うわ、すごい人ゴミだよ、千柚、だいじょう…!千柚!」


昇降口に近づけず、固まったままのわたしに気付いた歩実は心配そうに駆け寄ってきてくれた


「やっぱ無理?だめ?」
「う、わ~みんな元気だなあ、あは、はは…」
「無理、なのね…」


そう、わたし実は男の子が虫よりも苦手だったりするのです
それを知っている歩実はいつもわたしのそばにいてくれた


「とりあえず、じゃああたしクラス表見てくるからー…」
「う。うん…」


心配そうにわたしを見てから、駆け足で昇降口に向かう歩実にごめん、ともう一度言ってから、壁によりかかった

しばらくぼーっとしていると、流れる足音が自分の横でぴたりと止まったのを感じた


「…あれ、顔が真っ青だけど大丈夫ー?」


声をかけられて、びくんと肩が揺れる。声色でわかる、これは女の子の声じゃない

恐る恐る振り返ると、…いま、一番会いたくない生物がそこにいた
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