かたつむりの恋心
ぼくをみつけて
梅雨入りしましたという宣言がなくても日本中が薄々気付き始めていて、いざ宣言されて「ああ、やっぱりな」と受け容れざるを得ないこの時期。

ナツメはこの時期が比較的好きだ。

外が雨なら、休み時間や昼休みにぶっ続けで本を読んでいたって変に思われない。

図書室から追い出されることもないし、周りにも読書中の人間が少なからずいるからだ。


誰しも少なからずそうだろうが、ナツメは部屋の隅っこに座るのが好きだった。

図書室だと、カウンターから見えず、ほかの人が滅多に入ってこないような、本棚の隅っこ。

そこで、誰にも邪魔されず、よけいな心配もせず、思う存分本を読むのが好きだった。

そして……

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