かたつむりの恋心
ある教室のドアの前で立ち止まった。

「ここに入る」

自分の意志か、それとも命令なのか、よくわからない。

語尾がいつも思いっきり下がるので、疑問符も何もかもが終止符に聞こえるのだ。

なぜだか思いだした。

未然、連用、終止、連体、仮定、命令。

「お、おじゃましま~……す……」

おそるおそる入ってみる。

「ここが文芸部。」

「わあ……!」

ナツメの好きな本があった。

読みたかったけれどもまだ読んでいない本もある。

思わず、上を向いたままぐるぐると二周もしてしまった。
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