赤い愉楽
「どなたですか…」


消え入りそうな声で
応対する怜奈。


玄関先にはスーツ姿の男が立っていた。

男は怜奈が見上げる程
背の高い男だった。

若さ溢れる艶のある髪を
神経質そうに触りながら

男は怜奈の顔を見据えると
おもむろに口を開く。


「私は…」


男の言葉を聞いて
思わず口を押さえる怜奈。


怜奈の眼から
一滴の涙。


「私は旦那さまからの
伝言を預かっております」


男はそう言ったきり何もしゃべらない。


時間が止まったようなその空間で
怜奈の涙は流れ続けていた。

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