赤い愉楽
「あなたはご主人の思い出を話す時は


本当に楽しそうだ。


あなたは本当に…」


奥田はふと下を向く。


「ご主人を愛してたんですね」



怜奈も下を向く。


そして
遺品の本を取り出して


じっと見つめる。



「奥さん、いや…怜奈さん」


奥田は意を決したような顔。


「ご主人を失ってあなたは
心の隙間が出来てしまったようだ。


その隙間をそのままにしてしまっては
あなたは不幸なままだ。


もし…もしよかったら」



怜奈は奥田の真剣な顔を
盗み見る。


頬を赤らめる怜奈。



「私がその隙間を埋めたい」
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