茜ヶ久保マリネの若気の至り
侍女は耳を疑うような台詞を言ってのけた。

「戦わなければ、天空宮の海は蹂躙される。あの汚らわしいサハギンや、傲慢で不遜なリヴァイアサンに牛耳られるのよ?」

「人魚はそもそも戦の為の力など持ち合わせてはおりませぬ。有事の際には、戦闘に長けた別の種族に守護してもらう…太古の昔からそうしてきたではありませぬか」

侍女の言葉は確かだ。

仮に戦になったとしても、人魚族は後方支援がその役目。

魔法による結界や、治癒魔法などのサポートがその役目だった。

そうやって何百年も何千年も、天空宮の海は護られて来たのだ。

しかし今回は事情が違う。

かつては同胞であったリヴァイアサン一派が武力蜂起したのだ。

しかも忌々しいサハギン族と手を組んで。

ならば戦闘には向いてなくとも、我々人魚が剣を執るしかないではないか。

「人魚は海竜王には絶対恭順」

私の言葉を遮るように、侍女が硬い口調で告げた。

「古よりの盟約にございます」

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