茜ヶ久保マリネの若気の至り
海刀神を正眼に構え、踏み込もうとする。

その時だった。

「動くな、茜ヶ久保マリネ!」

侍女を押さえ込んでいたサハギンが叫ぶ。

侍女の喉元にはサハギンの水掻き。

鋭利な水掻きは、人魚の柔らかな肉など容易く切り裂いてしまうだろう。

「お前がそれ以上俺の仲間を斬れば、俺はこの人魚の娘を二目と見れない姿にする」

「…っ…」

構えたまま、私は動きを止めた。

小賢しい…雑魚の分際で、人質を取るなんて姑息な真似を…!

しかし、私が最も恐れていた展開だった。

これが私の甘さ。

人の上に立つ者として相応しくない。

私は大勢の為に少数を切り捨てる。

そんな冷酷な真似はできなかった。

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