記憶 ―惑星の黙示録―
ハルカちゃんが心配そうに少し屈み、自分も息を切らせながら言った。
「…だっこ、する…?」
『――しないッ!…ぜぇ…が、頑張るもーんッ!男の子だもー…ん!』
そんなコンちゃんの強がりに笑みを溢しながらも、…人の事を笑ってられる状況じゃない。
マジで、辛い。
だけど弱音は口にしない。
一番「辛そうな人」が、
先頭をきって一生懸命に進んでいるんだから…。
また、
その体を「透けさせて」…。
だから…
そんな姿を見ているからこそ、皆も頑張って先へ進んでいた。
「…アラン、平気っ?休むっ?」
そう私は何度も聞いていた。
その度に、
『花畑へ…』『早く…』
そう繰り返した。
今は、もう…
私の問い掛けにも答えない。
私たちを振り返りもしない。
「笑え」ない程に、
自分自身と戦っていた。
「…はぁ、も…もう…すぐっ…」
――アラン…?
アランが、何か話してる。
その苦しみながらの小さな声が聞き取り辛くて、私は自分の体に鞭を打ってアランの消えかけた体に追い付く。
「…はぁ…何っ…?」
そう覗き込んだアランの歪んだ顔からは、向こうで揺れる草花の姿が透けて見えていた。