記憶 ―惑星の黙示録―
世界を映す、想いを映す池。
もう誰の想いにも囚われず、
きらきらと青い空に照らされて、風に吹かれた橙色の花の姿を写していた。
有りのままの情景を…
私はアランと手を繋いだまま呆然としていた。
無表情のまま…
瞳からは、
つぅと涙が零れていた。
静かに、
心の膿が漏れ始めていた。
いつ戻って来たのか、
リュウさんが目の前に居た。
「…奈央ちゃん、あんまりこの池を使っちゃ駄目だ。アランみたいになっちまうぞ?」
そう言って、池から離れさせようと両手で私たちを追いたてた。
「…想い出に囚われると、前に進めなくなる。アランみたいに、なぁアラン?」
「あはは…俺の事は今はいいじゃん!リュウ…」
そんな会話の内容は、私の耳の右から左へと流れていった。
もう…
自分の事だけで精一杯だった。
余裕なんて、無かった。
「…ぁ…あの鈴、コンちゃんにあげちゃった…」
小さな鈴は、
私が持って来た物だった。
「…返さなきゃ…愛里に…」
「残念だが、あの鈴はもう返せないだろうよ。」
リュウさんは片手で頭を掻きながら、私にそう静かに言った。