記憶 ―惑星の黙示録―


「…じゃあ、誘拐犯アラン。お前さん、ちゃんと最後まで責任取って扉まで奈央ちゃんを送り届けてくれよ。」

「…え?」

扉は、リュウさんがここに出してくれるんじゃないの?


「…勿論!で、どこに行けば良いのさ?」

アランはそう高々な声を出すと、私の手のひらを再び自分の手へと導く。

当たり前の様にそうした事が、今となっては何だか照れ臭かった。

そんな私に気付いてか、リュウさんは少し笑った。


「…風の道を、強化して空に引いた。それを使って、始まりの崖まで飛んでけ。」

「――了解~ッ!」

扉はそこにある。
その言葉はそう指していた。


「じゃあ、俺は次の仕事があるから、ここで。奈央ちゃん、また…いつか、な?」

「…うん。有り難う、リュウさん…」

私はその扉をくぐったら、
一度…ここでの事は忘れてしまうのね。

でも、
いつか私にとっての遠い未来、
またここへ戻って来たら…

きっと思い出す。

だから、
『また、いつか』…


世界によって、
時の流れは違うから…

それにこの世界には時は無い。

その長い時間は、
リュウさんにとっては、とても短い時間なのかもしれないね。


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