記憶 ―惑星の黙示録―


他人事にムキになる私を声を殺して笑いながら、アランは優しい顔を作る。


「…もう平気だよ?短い間だったけど俺は奈央と過ごして、奈央が何かに気付けた様に…俺も光を見つけたから。」

「…光…?」

アランも、
前に…進むって事?


「さぁ、どうでしょ~?鬼さんが今居ないって事は…どうなんでしょうかね~?」

そう核心には触れない形で、ふぃっと顔を背けて知らんぷり。


「…ふふ…」

でも私は知ってるの。

――ちゃんと、進むんだね。


ずっと見守ってきた人。

愛里は、幸せになるよ?
梓さんも愛里が居るから幸せだよ?

私が帰って、
アランの分も…心からの『おめでとう』を言うからね。

もっと、幸せになるよ…?

これからは…
アランの代わりに。
私が…
ちゃんと二人を見てるよ。

だから安心してね…



「…やっぱり、…奈央と逢えて良かったよ、俺…」


そう私から瞳を反らしがちに貴方が言った言葉は、

とても愛しい「宝物」。


忘れてしまう、
記憶から消されてしまう…

儚い、大切な言葉。


それでも…
心の底の底の方で。

きっと、
これからも「宝物」。


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