記憶 ―惑星の黙示録―
あれ…?
ヘラヘラ笑う軽い貴方が、
時折見せる…
この真剣な表情を…
私は、
知っている気がしたんだよ?
仕事で嫌な事があって、
それが降り積もって爆発しそうな夜だった…
いつもより飲み過ぎた私は、
カウンターで眠りこけていた。
『…奈央~?閉店の時間だよ~。起きて?俺、送ってってあげるから…』
そう、
断片的に…思い出す。
『…お酒弱いくせに、こんなんなるまで飲んじゃダメでしょ?襲われちゃうよ~?』
律儀に部屋に送ってくれた貴方の温もりを、
多分…
私が離さなかった。
『…普段我慢しすぎなんだよ、奈央は…。今は俺しか見てないから、たくさん泣いて…そしたら、また明日頑張れる…』
貴方の胸の中では、
自然と素直になれて…
その胸で、
たくさん泣いた気が…
そして……
たくさんの温もりを貰った。
次の朝…、
目覚めると居なかった貴方を、
私は無かった事にした。
自分の、
弱さを知ってしまったから。
それからは、
あの居酒屋からも疎遠になっていたんだ。