サクラミチ。
あの時、階段から落ちた鈴夏を受け止めたのは、日向ではなかった。
日向は、鈴夏が階段から落ちる瞬間精一杯手を差し出したが届かなかった。
階段のすぐ下を歩いていた黒髪の男子生徒が鈴夏を受け止めたのだった。
それを日向はただ見てることしかできなかったのだ。

「ほんとにありがとう。君が受け止めてくれなかったら、捻挫だけで済まなかったと思う…。俺、望月 日向。本当に助かったよ。」

日向は安心したような顔で男に言った。
男は、少し鼻で笑い、口を開いた。
「どういたしまして。俺は、木下太陽。
 ねぇ、あんた、あの子と付き合ってんの?
 じゃあ、ひとつ言っておくけど、あの子のことちゃんと見ておいた方がいいと思う。
 次は、こんなんじゃ済まないかもよ。」

そう言って去っていく太陽の背中をみて、日向は寒気がした。

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