サクラミチ。
            *
 彼は、落書きを見たあとすぐに山川真央のところに急いだ。
そして、聞いた。

「…机のらくがきって山川さん?」
「・・・?なんのこと?」
「…なんでもない。ごめん。」
彼は、眉をひそめた。

            *
鈴夏が机をみると、

「何で嘘ついたんだよっ!」

と書いてあった。
鈴夏は、嫌われたと思った。
嘘をつかれたら、誰でも嫌な気持ちになる。
そんなことわかっていた。
涙が止まらなかった。

「私、あなたが思っているほど明るくないの。
すんごく暗くて、地味な女なんだあ。…ごめんね、うそついて。」

鈴夏は、この言葉を最後に終わるはずだった。
でも、返ってきた言葉は
「見た目なんて関係ない。
おれが好きなんだからいいんだよ。だから、今度会って」
まさかの言葉に、鈴夏は驚いて、初めてかけられたやさしい言葉に感動した。
鈴夏は、書いた。

「ありがとう。そんなこと言われたの初めてだよ… 
どうして、顔も見たこともない人のことそんなにも信じられるの?」

いつも返ってくるのは、遊びだとか嘘だとかいう冷たい言葉。
鈴夏は、期待していなかったが、彼は何か違う気がしていた。

返ってきた言葉は、やさしい、素直な言葉だった。

「君とこうやってると楽しいし、やさしい君が好きだからかな…」

鈴夏は、“好き”という言葉に実感が持てなかったが、嬉しくてたまらなかった。
そして、机の隅っこに

「明日の放課後、校庭の桜の木で待ってる」

と書いてあったのだった。
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