サクラミチ。
   *
 次の日、日向は鈴夏のことが気になっていた。
手掛かりは同じ学年だということと、長い黒髪の後ろ姿だけ。自分のネクタイと同じ色のリボンと走る姿でわかったのだ。
日向は、同じ学年のすべてのクラスに聞きまわった。鈴夏は音楽室のあの机を使うのはC組と鈴夏のクラスしかないことを知っていたが、日向は知らなかったのだ。
「長い黒髪で、静かそうな・・・・暗そうな女の子って誰かしらない?」
好きな人のことを暗いというのはつらかった。でも、『暗い』という単語を使った方が見つかる確率が上がるのは確かだった。

「あ~星さんじゃない?」
「星さんって?」
「うんと、星 鈴夏さん。がり勉で周りとつるまない地味な人よ。」
「・・・星 鈴夏」
「で、なんでそんなこと聞くの?」
「えっ、あっ、ちょっとね・・・」

マイナスな言葉が次々と返ってきて、日向は複雑な気持ちになった。
でも、一回好きになった人のことを簡単に諦めることはできなかった。
                 *
 そのころ、鈴夏はあの時の声で、日向に自分の気持ちを伝えようと思っていた。
そして、音楽室に行った。
すると、机にはすでに書かれていたのだ。

「もう一度、桜の木の下で待っています。」
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