Alice Doll

人形館の噂

***



 有り得ない。

 少女は隣の少女と共通の友人の話を聞いていた。しかしその話に少女は、有り得ない、という言葉とニヒルにも近い笑いで返した。友人の話とはこの周辺では余りに有名すぎる人形館の話だ。

 人形館……。そこは、ぱっと見れば豪華な洋館。門扉や扉が一般宅と比べ物にならないほど大きければ、窓も比べ物にならないほど多く、庭など言うまでもない。

 しかしここで奇妙な噂が一つ。住んでいるはずの人間を誰も見ていないのだ。専属の庭師でさえ、その館の主を見たことがないというのだ。その癖して窓に人影が写ったり、窓から見える人形が増えたりする。
 少なからず人気はあるのに、その存在は目に見えない。


 そんなこの近辺では有名な謎の屋敷として噂に尾が付き、鰭が付き、出回っているのだ。

 少女はそんな事実も含め、友人の話を鼻で笑った。
< 4 / 80 >

この作品をシェア

pagetop