プリンセスの条件
「翔太……翔太……」
別に意識しているわけでもないのに、あたしの口が勝手に翔太の名前を呼ぶ。
こんな感覚初めてだ。
いつも男の人に抱かれる時、変な顔は見せたくないから演技しているあたし。
感じてるフリをする。
だってそれで喜んでくれるから。
だけど今日はいつもと違う。
顔が作れない……
演技できない……
そんな余裕どこにもない。
寄せては返す快楽の波にのみ込まれて心が叫ぶ。
──気持ちいいと。
「翔太ぁ……もうダメ……」
初めてのこの感覚が怖くて、涙目になりながら翔太にしがみつく。
そんなあたしに翔太は何度も何度もキスをしてくれた。
「マ…イ…」
「翔太……ッ」
意識が飛んだ瞬間、翔太があたしの耳元で何か囁いた。
「───る、マイ」
「え……?」
なんて言ったのか分からない。
だけど最後に見えた翔太は、今までで一番穏やかに微笑んでいた。