プリンセスの条件

「帰ってよ!もう翔太の顔なんて見たくない!」


翔太の背中を泣きながら押した。


「おい、マイッ!」


「帰って!あたし、今きっと翔太にひどいこと言っちゃう。……これ以上惨めな思い、させないでよ……」


翔太が女の子と2人でいる姿なんて、見たくなかった。


味方だと思ってた翔太に軽い女だと言われたこと……他の誰に言われるよりも辛かった。


「翔太だから……」

「え?」

「翔太だから抱きしめてほしかったんだもん。……他の人じゃ……もうイヤなの」


最後の一言で、翔太は立ち止まって勢いよく振り返った。


あたし自身も、自分をコントロールできなくなって。


そのまま翔太の胸に飛び込んだ。


「あの日……」

「え?」

「あの日、翔太に抱かれなきゃよかった」


あの夜がなければ、こんな気持ちに気付くこともなかったのに。


「翔太だって……後悔してるんでしょ?……あたしを抱いたこと」


なかったことにしたかったのは、彼女のためなんでしょう?


ギューッと翔太のシャツを掴むと、フワッと優しい大きな腕に包まれた。


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