プリンセスの条件

マイに初めて彼氏ができたのは、中2の1学期。

相手は1学年上のサッカー部の先輩だった。

名前は、高垣翼。


サッカーのヒロインになるためにつけられた名前だろう。

と、突っ込みを入れたくなる。


だけど先輩は、その名前に相応しいくらいサッカーが上手かった。


『ねぇ、翔太。あたし、今日からもう一緒に帰れないから。先に帰っていいよ』


10クラスもあったのに、中2のクラス替えで奇跡的にマイと同じクラスになれて喜んでいた矢先に告げられた言葉。


『え……、なんで?』

『へへー。翼先輩にコクられちゃった』

『は?』

『だーかーらー!翼先輩に、付き合おうって言われたの!!』


顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに背中を向けたマイ。


……世界が終わったと思った。



高垣翼。

マイのファーストキスを、付き合って2日目にして奪った男。


きっと、本当の意味でのマイのファーストキスの相手はオレ。


だけど“男と女”としての、マイのファーストキスは……


この男に奪われた。


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