デジ*ナデシコ
パーティー

真夜中の横浜。高級ホテル「スターダスト」では結婚パーティーが行われていた。


『皆さん、今日は私、永岡 亜樹と 永岡 八重 の結婚披露宴にお越し下さいましてありがとうございます。

突然ですが、呼び出しをさせていただきます。』


大広間に放送がこだました。

『永岡 翔太、永岡 政敬。2人は902号室まで来なさい。』

シャンパンを乾杯する音が、そこらじゅうから聞こえる。


このパーティー会場には、いくつかの「レベル」というものがあった。

まず、そのレベルが1から10だとすると、日本人はごくわずかで、しかも1にもみたない。

そのせいか、その選ばれた日本人は我が物顔でここに来た。


なんとも惨めで滑稽だ。


本当ならパリでやるはずだった披露宴。

なぜ横浜になったかというと、主催者であり、主役である新郎の亜樹は
生まれながらに体が弱く、

専属の医師に体力的にパリは
不可能と言われたからである。


横浜は、亜樹、翔太、政敬の生れ故郷であった。



なんと夜景の綺麗な事だろう。

そこに夜景を遮るように、一人の青年が走ってきた。


「お、俺今呼ばれませんでした?」

小さな声が答えた。

「はい。今さっき…」


その声はまるで小鳥のようで、おもわず青年は振り返ってしまった。


なんて小柄で優しそうな人なんだろう…

「…お急ぎですか?」


しばらく見とれていたが、その言葉でハッと我に返った。


「いえ…あ、俺は永岡 政敬っていいますが、今日はどうして?」

そういうと、彼女は申し訳なさそうに

「私は桜井艶奈と申します。
新婦の八重様は着物を好まれていまして、

今日は着付け係として来たのですが、
八重様は楽しみなさいと…」



突然放送が鳴り響く。

『永岡 政敬、至急902号室まで来なさい。』


会場の皆が政敬を見る。

「すみません、では!」



政敬は大急ぎで階段を下る。

『ガチャッ』

902ドアをあけた瞬間、倒れこむ。


しかし寒い。


冷たい空気が舞い込む。



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