ホタル


彼女の柔らかくて白い肌を背中に感じ、僕もまた彼女の背中に腕を回す。

お互いの体温を直に感じ鼓動に耳を傾けている時だけ、僕達は何も怖いものがなくなる。

その瞬間だけ、ありもしない永遠を掴めた様な気持ちになる。


「......幻なんかじゃないよ」


僕は彼女の耳許でそっと呟いた。

僕の胸元で小さな頭がコクッと頷く。


彼女の体温も、肌も、髪も、爪も、汗の一滴でさえ全て記憶に焼き付ける。



暗闇の中が僕等の一番の居場所だった。


抜けることのできない永遠の闇にいるにもかかわらず、僕は闇を貪り、求め続ける。


そこでしか彼女を、こうして抱き締めることなんてできないから。







......本当だ。


僕等の恋は、まるでホタルの光りだった。



闇でしか存在できない、儚く小さな光り。



いつ消えてもおかしくないその光りを、僕等は全身で守り続けていた。



痛い程のその感情を、恋と呼ぶことにすら怯えながら。
















……………






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