幸せの条件
 悠が静かに息を吐いた。

私は、振った震える右手を悠に分からないように左手で隠した。

「さくら、ごめん。」

「悠、もう気にしないで。・・・こうちゃん、戻れたんだね。」

「うん。」

私は、ホッとする。

「あのね、さくら・・・。」

悠の言葉を私の携帯電話の着メロが遮った。

「・・・お姉ちゃん?」

私の顔から血の気が引く。

体が足元からガクガク震えてくる。

悠が私の手から携帯電話を奪った。

「さくら!早く行って!!」

私は、悠の大きな声で我に返り、走り出した。

< 155 / 202 >

この作品をシェア

pagetop