幸せの条件
 「ねぇ、こうちゃん。あれ、食べたい。」

私は、露店のかき氷を指差した。

人混みから離れ、堤防に寄り掛かって孝太郎を待つ。

浴衣姿の女の子たちがはしゃぎながら通っていった。

私は、ふっと思い出す。

毎年、葉月と歩とナンパされるために浴衣を着て祭りに出掛けていたことを。

「・・・お待たせ、片瀬。」

孝太郎が早歩きで私のところに戻ってきた。

私は、かき氷を受け取り、1口食べる。

「・・・ねぇ、こうちゃん。片瀬って呼ぶのはやめて。名前で呼んで。」

「・・・お、おう。」

孝太郎は、右手で自分の頬を掻いた。

民宿に戻ってきた2人は、1つの布団で眠りについた。

波の音と孝太郎の心臓の鼓動が私にはとても心地よく、久し振りに深く眠れた。

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